「セイビング・ザ・サン」で長銀の破たんを巡るドタバタを書いた、ジリアン・テットによる「愚者の黄金」を読んだ。リーマンショックコンフィデンシャルやThe End of Wall Streetのような金融危機ものだと思っていたけれど、あにはからんや1994年4月のボカラトンホテルでのブレインストーミングに始まったクレジットデフォルトスワップ(CDS)の歴史の話。
ネットでの批評を見るとどうもJPモルガンの話ばかりに偏っていて不公平とのこと。とはいえCDSの本当の役割やなぜCDSが急速に普及したのかが、これを読んでようやく腑に落ちたので忘れないうちにまとめておく。一言でいえばBIS規制をかいくぐるためにCDSが使われていたということ。
- BIS規制の意味とは、「リスクアセット」と定義した保有資産について一律に8%の引当金を積む義務を負わせること。
- 銀行は1億円の投資(融資)に際して800万円の資本を積むことが求められるため収益機会があっても資金調達ができなければ投資できない。
- CDSで保有資産のリスクを「消す」ことにより、追加的な資金調達をしないで新規に投資を行うことが可能になった。
- BIS規制を守ったまま実質的にレバレッジを上げることが可能になった。
- CDSが急速に普及した背景には銀行がBIS規制の抜け穴としてCDSを使ったことがある。
- CDSを使って銀行のBSから資産が完全に切り離されていればよかったのだが、「リクイディティプット」(流動性がないときには資産を銀行が買い戻す)契約が付いていた「スーパーシニア」資産の買い戻し義務があったためそのリスクを負担することになった。
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