2014年4月8日火曜日

Flash Boys by Michael Lewis

Michael Lewis

1980年代後半のウォール街の投資銀行ソロモンブラザーズ(無くなった)とモーゲージ市場を記述した「ライアーズポーカー」や、ブラッド・ピット主演で映画化されたオークランドアスレチックスの話「マネーボール」の作者として有名なノンフィクション作家のマイケル・ルイスが3月末に新作を出した。

Flash Boys

タイトルは"Flash Boys"

前2作品「世紀の空売り」と「ブーメラン」の流れを受けて今回も金融経済を扱った内容で、アルゴリズム取引というかHigh Frequency Trader(高頻度取引業者)を扱った内容。

邦訳はしばらく先になるだろうし、原書も日本に入ってきていないようなので内容はわからない。そこでWall Street Journalの書評を見ただけで中身を見ないままポイントを手短に。


Flash Boysのポイント


*そもそもの端緒

オンラインブローカーにログインして、例えば、インテルの板(英語ではbookという様)を見た。すると、INTCには26.10ドルで500株の買い注文、26.25ドルで300株の売り注文が出ていることが分かった。そこで26.25ドルで買おうと思い成り行きで300株の買いを発注した。しかし、26.25ドルの売り注文は買いを出した途端に消えてしまい、代わりに26.27ドルで300株が約定した。INTCに限らずほかの株でも注文するたびに同じような現象が起きる。これはなぜか。

*答え

現在米国株はNYSE、ナスダックを含めて10以上の取引所で取引されているが、最良執行義務のみたいなのがあり、ブローカーはもっとも投資家に有利な値段で約定させなければならない。そこでブローカーは、あなたからINTC300株の買い注文が入ったら全部の取引所を見て一番安い値段を出しているところに注文をつなぐ必要がある。実際にはデータをping(データ上での打診?)して一番良い値段を探すのだが、最初の一つの取引所にINTC300株の買い注文を問い合わせた瞬間に、その情報がHFT業者に伝わり、HFT業者はものすごいスピードで他の市場に出ている最良値段を買ってしまう。そして1セント高い値段でINTC300株をあなたに売りつける。一瞬の間に。規制当局者が投資家のために懸命に旧式のマシンで最良値段を探している間に、最新マシンで武装したHFT業者が最良値段をさらって行ってしまうのだ。

いつものマイケル・ルイス節

相変わらずマイケル・ルイスの本の構造はシンプルで、一言でいえば「素朴な疑問⇔それに対する回答」。それにいろいろエピソードを足して本を丸一冊を書き上げている。

例えばだ
「マネーボール」⇒なぜ貧乏で有名選手を引っ張れないアスレチックスがあんなに強いのか?
「ブラインド・サイド」⇒なぜアメリカンフットボールのポジションのうちレフトタックルの年俸が高騰しているのか?
といった感じ。

日本のマイケル・ルイスになりたい藤沢数はどんな感想を持つのだろう。まさの彼の仕事にかぶる内容だろうしぜひ読んでみたい。

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