2014年6月2日月曜日

物言う投資家とインサイダー取引

週末に有名なアクティビスト投資家がインサイダー取引に関わっている疑いでFBIとSECが調査中、という報道があった。

アクティビストがインサイダーというと村上ファンドとライブドアの話しを思い出すが、この話はちょっと違う。アクティビスト投資家がインサイダー情報を聞いちゃったのではなくて、アクティビストが自分の投資行動を事前に知り合いに伝えていた疑いがあるという内容。

記事のアクティビスト投資家とは、アップルに自社株買いを要求したことなどで有名なカール・アイカーン。


アイカーンが経営する投資持ち株会社のIcahn Enterprisesは2011年7月15日に、掃除用洗剤などを作っているCloroxの株式を一株につき76.50ドルで買収すると提案した。その少し前までCloroxは60ドル台で取引されていたので、アイカーンの提案を受けて株価が上昇したのだが、提案の前の7月11日に大量にClorox株のオプションを購入した人がいるのでFBIとSECが調査を開始した。
 



そしてアイカーンから情報をもらって取引したのではないかと疑われているうちの一人がラスベガスに住んでいるsports betto(フットボールやバスケットボールへの賭けで生活している人。アメリカにはそういう職業が存在らしい)のBilly Walters。アイカーンとはポーカー仲間で一緒にフットボールの賭けもしている。

疑われているうちのもう一人がプロゴルファーのPhil Mickelson。Waltersのゴルフ友達。

アクティビストが自分の取引に関する情報を事前にリークしているという話は以前から噂されていたようだが、
果たしてそれが違法行為なのか
という点についてははっきりしていないようだ。

アメリカ法がインサイダー取引を違法としている背景には二つの考え方がある。一つは「信任義務理論」でもう一つが「不正流用理論」だ。

信任義務理論は、会社関係者は株主のために誠実に行動する義務があり、会社の内部情報を株主以外の者(自分や知人)の利益のために利用することは株主に対する詐欺、という考え方。

不正流用理論は、TOBなどのインサイダー情報は情報所有者が独占的に使用する権利があり、その情報を伝えられた第三者が自らの利益のために使うことは、インサイダー情報の不正流用、という考え方。信任義務理論だと買収者サイドからTOB情報を得て行うインサイダー取引をカバーできないため導入された。

アクティビストがアクションを起こすという情報を事前に知ってインサイダー取引を行っているということになれば、不正流用理論が適用されそうな気がする。ただ、アクティビスト側が「ちょっと恩を売ってやろう」という気分で、取引に使われることを承知の上で情報をリークしていた場合も不正流用理論があてはまるのだろうか。不明。

しかし、よく考えたらアイカーンの会社は上場しているので、その株主に対する信任義務違反ということでこのケースは対応できるのかもしれない。切り取り方は当局がいろいろ工夫できそう。


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