2014年5月9日金曜日

予測市場について

予測市場がなんとかという本を読んだのでそのことについて。


予測市場とは、予想が当たればもうかる(予想が当たれば1万円もらえる)クジを発行して、それを市場参加者に自由に取引させることにより、市場参加者の集合知を利用して意思決定に役立てるための仕組み。

例えば、テレ東の大江アナが年内に結婚を発表すれば1万円をもらえるというクジを作る。そのクジは売り手と買い手が合意すれば好きな値段で自由に取引できるようになっている。仮に現在そのクジが5000円で取引されていれば、大江アナが年内に結婚を発表する確率は50%であると市場参加者が予想しているという仕組み。

そして、この予測市場はアメリカでは結構しっかり運用されていて、一番有名なのはIowa Electronic Market(IEM)というところの大統領選挙の予測なのだが、これまでどんな世論調査や評論家の予想よりも大統領選挙の結果を当てているそうだ。

素人が集まって予想しても役に立たなそうな気もするが、意外にもあたるとのこと。この背景にあるロジックとして4択のクイズ番組の例えがある。日本のも同じルールかは知らないが、クイズを出された回答者は答えがわからない時に、観客に正解を聞くことができる。正解を知らない観客がランダムに答えを選ぶとすると、仮に100人の観客がいて4人が正解を知っていれば、残りの回答を知らない観客は、平均すれば24人(=(100-4)/4)ずつ4つの選択肢に分散する。このため100人の観客のうち24+4=28人が正解の選択肢を選ぶことになり、観客の多数決を取れば正しい答えが選ばれる。

そのため、完全に運頼みのもの(宝くじの当せん番号、ルーレットの出目)を予想するには全く役立たないが、「知ってる人」や「詳しい人」の知恵があれば正解に近づくような問題には役立つ。本の中に出ていた例にはこんなのがあった
  • 今度公開する映画の興行収入はどのくらいになるか。
  • 現在進めているプロジェクトは予定通りに終了するか。
  • クリスマスシーズンの当社製品の売上はどのくらいか。
  • あと個人的にいいんじゃないかと思うのは「年内に中国の人民解放軍が尖閣諸島に上陸するか」
ポイントとしては、なるべくいろいろな人が自発的に意思を表明できる仕組みにすることなので、
  • 多様な市場参加者に取引させること
  • 市場参加者の匿名性を確保すること
  • 正しい予想をすれば利益が得られること
  • ショート(空売り)も買いと同じように簡単にできるようにすること
 が大切。 

自由な取引で価格を決めるということでいえば株式市場も予測市場ではあるのだが、そもそもの趣旨がちょっとちがう。株式市場の目的は資金調達の場を提供することで、予測市場の場合は人々の知識を正確に反映させて予想に役立てること。

したがって、株式市場ではインサイダー取引を許して、一部の人間だけがいつも儲かるようにしてしまうと一般の投資家が逃げてしまい機能不全に陥るが、予測市場ではインサイダーが積極的に取引に参加して内部情報を価格に反映させる方が目的に適う。

ただ、予測市場は賭博と紙一重だったり運営が面倒な模様で、どうもIEM以外長続きしていない様子。

本で取り上げられていたIntradeは予測市場の運営を一時停止しており、日本のWikipediaに出ている予測市場はほとんどがアクセス不能になっている。大変面白いし役に立ちそうな試みだと思うのだが盛り上がりに欠けるようだ。

この背景(特に日本で低迷している理由)についてはいろいろ分析されているがよくわからない。


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