2014年8月1日金曜日

ネット広告どうしてこうなった~アドテクノロジーの歴史をまとめよう

ザ・アドテクノロジーという本にネット広告がどういう経緯で今に至ったのか書いてあった。いい話なので、忘れないように、自分なりにかみ砕いていろいろ情報を付け加えまとめた。



1. インターネット普及当初のネット広告

始まったばかりのメディアなので、そもそも広告を出せる「メディア」であるという認識がほとんどなかった。使っている人もエンジニアが中心で、インターネットというのはテクノロジーの話でマーケティング的な観点ではあまり重要視されていなかった。しかしながらYahooなど集客のあるサイトには広告配信が始まった。手法は全く洗練されておらず、雑誌広告と同じように、サイトの運営者に広告代理店が話を持ちかけて、広告を出せる「枠」をとりそれを広告主に営業する形。何月何日の何時から何時までバナー広告を出すといくら、といった形式で広告を配信していた。広告自体も、サイト運営者にコンテンツと並べて広告用の素材を入れてもらうやり方だったため臨機応変に広告を変更することは不可能だった。

2.ネット広告の独自性が出てきた時期

インターネットなら広告の効果を計測することも現実的だということで、徐々にサイト訪問者(オーディエンス)に対して広告が何回表示されたかとか、広告はどのくらいクリックされたのかといった統計を取って報告するようになる。また、コンテンツと同じサーバーに置いていた広告素材を、別途構築した「アドサーバー」に置き、コンテンツからリンクを張れば広告が配信される仕組みが普及した。アドサーバーの導入により、臨機応変に広告の配信内容を変更することも可能になった。

そのうちに広告の販売単位も従来のような時間あたりいくらではなく、広告の配信回数(インプレッション)あたりいくら、というよりネット広告の特性を反映した計算方法へ進化して行った。

3. 広告枠の売れ残りという構造的問題の発生

この段階でもネット広告代理店がサイト運営者からインプレッションを買い取ってそれを広告主に仲介するという仕組みは従来と同じままだった。

広告販売の単位が時間からインプレッションに変わったことで生じた違いは、時間は1日24時間で動かないが、サイトのインプレッションはサイトごと、時期ごとに波があるという点だ。先月100万インプレッションを集めたサイトが来月も100万インプレッション集めるとは限らない。

広告を販売するにあたって代理店がもっとも嫌うのは、約束通りに広告が配信できない、つまりネット広告においては、あるサイトについて100万インプレッション分の広告を売ったのに、そのサイトの訪問者がいつもほどに伸びず、約束したインプレッションを実現できないことだ。

そうした不一致を避けるため代理店がどうしているのか。方法は単純で、絶対に実現できそうな量まで、インプレッションを少なめに見積もって広告主に仲介しているのだ。そのため、ネット広告業界は、恒常的にインプレッションが余る=広告の在庫が残るという状況になった。

4. 売れ残り在庫のマネタイズ〜アドネットワークの登場

サイト運営者としては発生したインプレッション全部が売れた方がいいのだが、広告代理店は発生するインプレッション全ての買い取りを行わない。余ったインプレッションは、モノではないので、倉庫にしまって来月売るといったこともできずネット上に垂れ流されていた。この状況を解消するために登場したのがアドネットワークだ。

余剰インプレッションが発生した場合には、値段が通常の広告配信(純広)に比べて安かったとしても、なにも得られないよりは売れた方がましなので、それを現金化したいサイト(メディア)は、アドネットワークへ事前に登録しておく。

他方で、安く広告を出せるなら出したいと考えている広告主もアドネットワークに登録しておく。すると、アドネットワークが、登録されているメディアそれぞれで発生したインプレッションに対し、登録されている広告主の広告を配信する。メディアにとってはこれまで捨てていたインプレッションで収入が得られ、広告主にとってはより安い価格で広告ができるようになった。ウィンウィンだ。

5. 売り手と買い手の力学の変化

さて、ネット広告に限らないのだが、広告業界は特殊で、限られた広告枠を大勢の広告主が争って買っており、希少な広告枠を押さえているメディアと、その仲介をする広告代理店の発言力が大きく、売り手が買い手(広告主)を選べる状況が続いていた。

しかし、ネットコンテンツの増加によってメディアが無尽蔵に発生し、かつアドネットワークを通じたマッチングによりインプレッションの「叩き売り」が日常となった。中にはこれまで代理店経由で買っていたインプレッションも含めて、全ての広告をアドネットワークで配信して、広告費用を押さえることに成功する広告主も現れた。

6. RTB - Real Time Bidding - の誕生

単価の高い純広(代理店経由のインプレッション販売)の収入減少に直面したメディアは、単価引き上げのため、サイトで発生するインプレッション1件ごとにオークションを行い、落札した広告主の広告を配信するしくみを導入した。これがReal Time Bidding(RTB)である。

アドネットワークは広告主側にも新たな課題をつきつけた。インプレッションに対してどの広告主の広告を配信するかは、アドネットワークが計算した「効果」により決められる。また他の広告主が高い広告料を提示していれば、(メディアにとっては効果の高い)そちらばかりが配信され、登録しても全く広告を配信できない状況もあり得る。

ぜひ配信をしたいインプレッションに対しては、入札に価値さえすれば広告を出せるという点で、広告主にとってもRTBにメリットがある。

7. RTBの持つ意味とは

インプレッション1件ごとに入札を行うということは、狙った「サイト」に広告を配信する権利を買うのではなく、狙った「個人(オーディエンス)」に対して広告を配信する権利を買うということである。

当然インプレッションが発生したあと瞬時に配信しなければ意味がないので、RTBはアルゴリズムにより自動的に処理される。

メディア側はSupply Side Platform(SSP)、広告主側はDemand Side Platform(DSP)と呼ばれるプログラムを使用して、インプレッションの発生ごとにSSPがDSPに呼びかけて入札を実施し、配信する広告を決定する。

現在は純広、アドネットワーク、RTBそれぞれを使った広告の配信が並行して行われており、広告主、メディアは広告効果と利益を最大化するよう、それぞれの広告流通経路を取捨選択している。

1 件のコメント:

  1. 誤字を見付けました。

    広告費用を押さえること
    入札に価値さえすれば

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